
最近の若者や子供達の姿勢の崩れは酷いものがある。姿勢の崩れは不定愁訴を生むだけでなく、障害の起きやすい身体になるのです。特に最近の高校や大学のアスリートには、一昔前には考えられなかった怪我や障害を抱えている選手が多く、その原因の一端は姿勢の崩れである。
生活環境の変化に伴い、乳幼児期の最も大切な1年間を疎かに過ごしている子が多く、発育・発達の過程で運動学習が上手く行えないまま身体が成長し、また、外遊びの習慣も少なくなってきているので、自身の身体を上手く操作することが出来ないという障害が多く発生するのです。
乳幼児期の発育・発達で重要なことは、地球に生命が誕生して人間が二足歩行を獲得していくまでの約3億8千万年の過程を、赤ちゃんは僅か誕生から一年余りの期間で 獲得していくと言うことです。

まず人間が生まれて一番初めにする事とは、生命維持に重要な“呼吸”です。産道から出てきて、母親との絆”臍の緒”を切られたときに、最初のトレーニングが始まるのです。横隔膜と腹横筋を使って呼吸筋達を総動員して「おぎゃ〜おぎゃ〜」と肺に呼吸を送り込む作業を覚えます。
手足の動きはまだコントロールすることができず、原子的な反応を残しています。最初にひたすら泣くことで、呼吸筋を鍛えます。
横隔膜と腹横筋をトレーニングすることにより、脊柱まわりの単関節筋の機能を発達させているのです。そして首の回旋運動が起き、最初は反射運動であったのが、そのうち目が見え、視線が定まるようになると首が据わります。この時期から意思も生まれるのです。
首が据わると言うことは、頸部の回旋運動を意図的に行えるようになり、正中線を意識できるということです。そして、頸部の回旋と真ん中の意識が取れるようになって初めて寝返りがうてるようになります。
ここまでの経過を見ても、呼吸が上手くいっていない場合は、首まわりの筋肉の反応や、回旋が上手く行かないことが予測出来ます。事実、首のアライメントや動きの悪い選手は、呼吸が上手くいっていないことが多いようです。
また、そのような人は頭の位置に(姿勢)に不具合があります。それは、首が据わっていない状況なのです。回旋機能でも同じ事が言え、回旋が上手くいっていない選手は、手足に力みが入りやすいのです。

また、寝返りが上手く行えないとその後の発達が上手くいかなくなり、それがその後の運動やスポーツに影響を与えてしまうのです。ですから、寝返りが上手く行えているかどうかが重要にもなってきます。
次に赤ちゃんは寝返りをうてるようになると、手足にも意思を伝えられるようになっています。しかしまだ、重力に逆らえるだけの力はありません。重力に逆らう事が出来るのは、四つばい位やハイハイが出来るようになる時期です。
そして、四つばい位では、手足で移動できるようになっています。見た目は手足での移動ですが、これは脊柱の絶妙なコントロールで移動の際の位置関係をトレーニングしているのです。
移動する時の脊柱の安定、屈曲、伸展、側屈などの組み合わせ、そこに肩甲帯、骨盤帯の連動とコントロールが加わり、手足の動作となります。皆さんも赤ちゃんの真似をして頂くとわかりますが、正確なハイハイを行うとかなりキツク大変なものなんです。

これをトレーニングに置き換えてみると、肩甲帯や骨盤帯の動きが悪い場合やそれらの連動が上手く行かないときは、四つばい位やハイハイのトレーニングを行うことになります。この連動は、手足の動きの反応として養われていきます。
発育・発達を追っかけたトレーニングの順序では、体位の変化で追っかけて行きます。仰臥位→側臥位→うつ伏せ→四つばい位→膝立ち→立位と進めて行きます。
決して高度なトレーニングを行う感覚でなく、赤ちゃんの時に当たり前に行えていたことの練習という感覚です。だからこそ、この発育・発達に応じた体位でのトレーニングは、癖を抜くことの一番の近道といえ、怪我や障害を失くし、パフォーマンス向上につながるのです。
乳幼児期でのドーナツ型状の枕や、柔らかいベット、歩行器などは発育・発達を遅らせてしまうだけでなく、正常な筋の反応も鈍らせてしまい、姿勢の崩れにつながるのです。このような状況を防ぐためには、たくさんハイハイや一人遊びをさせ、早期の段階で二足歩行を行わないようにしていく事が一番です。
二足歩行を獲得するまでの約1年間を疎かにしてはいけないのですが、成長して大きくなっても改善していくことは可能ですので、諦めないで下さい。動作解析をして、発育・発達過程でどの段階が上手くいってないのか?を分析し、運動指導を行うことで、短時間で目標達成が可能となります。
Jリーグの「横浜・Fマリノス」での取り組みで、選手の動きが大幅に改善された秘密には、発育・発達過程から考えられたドリルを行っているからなんです。